1 除夜の鐘を聞きながら…

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「どうした?かなりうなされていたいたようだが…悪い夢でも見たか?」 タケルはその声にバッと跳ね起きた。 向かいには、うっすら笑みを浮かべ、ソファに座る高支那の姿があった。 タケルは少し混乱しながら高支那を見つめる。 この男のマンションへ自ら赴き、コタツに入ってウトウトしたまでは覚えているが、あまりの居心地の良さからか、それからじきに眠りに落ちたらしく、夢と現実との境がどうも定かでない。 しかしこの状況はどう見ても、タケルが単に悪い夢を見たにすぎない感じだ。 服も乱れてなければ、もちろん情事の跡らしきものも…ない。 なのに、悪い夢のはずなのに、身体の奥に残る甘い疼きがタケルを僅かに動揺させた。 タケルは軽く頭を振り、静かでいてどこか執拗な高支那の視線に気まずさを感じながら立ち上がり、 「顔洗ってくる…」 力なさ気にボソリと呟くと、気怠げに洗面所へ向かうのだった。
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