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だが…
その執拗さがいきなりフッと…解けた。
タケルが一瞬戸惑いながら高支那に視線をやると、高支那の見つめる視線とかち合う。
ドキッとしたタケルはすぐに目を逸らすが、そんなタケルを高支那はしばし見つめる。
いつもなら嫌味の一つでも言いそうな高支那のその表情はどこか物悲しさを感じさせた。
その痛みにも似た切ない空気を察したタケルは、ふと心細さを甦らせる。
孤独感を感じる瞬間――
また高支那を遠くに感じてしまう…
近くにいるのに、その存在がフッと消えてしまいそうな心許なさ…
次の瞬間――
高支那が微かに笑った。
それはタケルをどこか子供扱いしたような笑みだった。
いや、子供扱いというよりは――
これ以上もない愛情…
タケルをたまらなく愛してやまない切ない笑み――
だがそれも束の間、高支那の顔がいつもの感情のない冷徹な表情に戻る。
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