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どこか遠くで除夜の鐘が鳴っている…
タケルはそれをぼんやりと聞きながら、コタツで頬杖をついていた。
その時――
「どうした?もう眠くなったのか?」
リビングのコタツをL字型に囲む向かいのソファに座る男の口から、まるで嘲笑うような低い声が響く。
その声を聞いた途端、少しうとうとしかけていたタケルの頭がハッと覚醒する。
端正な顔立ちをした目の前の男は、タケルの担任教師――高支那だ。
タケルの両親は、やれ仕事だやれ旅行だとそれぞれが勝手に見え透いた言い訳をつけては家を不在にしていた。
こんな大晦日の夜に――。
家に一人いても落ち着かないタケルはこの日、なぜか高支那のマンションに転がり込んでいた。
どうしてここに来たのか…?
理由はタケル自身にもよく分からなかった。
行き場所のないタケルが何気に辿り着いた場所…
それが高支那の懐だっただけのこと――。
そんな高支那が痛いほどの視線でタケルを見つめてくる。
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