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そして高支那の手がタケルの顎を軽く捉え、また唇を奪われるかと一瞬身構えたタケルだったが…
高支那の手はゆっくりと静かに離れていった。
その表情に僅かな翳りを残して――
タケルに背を向ける高支那。
「高……」
タケルは思わず名を口にしかけたがすぐにのみ込む。
なぜか呼び止めることが憚られたからだ。
タケルは痛みにも似た不安を胸に抱きながら、黙って去る高支那の背を見送るしかなかった。
いつまでたっても消え去ることのない不安は、タケルに新たな危機感を呼び起こす。
それが近く現実のものとなることを知る由もなく…
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