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「本ばっかり読んでてどうせ友達も居ないんだろう」
「頭のいい人は違いますね?」
「美人は何もしなくても男が寄ってくるもんね?」
言いたい放題だった。
「……貴方達に何がわかるのよ」
八上さんがボソッと呟いた。
しかし、その声は僕らの耳にはしっかり届いた。
「貴方達に何がわかるのよ。私が今までどれだけ苦しんだか!」
キッとこちらをこちらを睨むその目には涙が浮かんでいた。
僕らは喋ることも動くことも出来なかった。
「自由に、何も考えずにただ生きてるだけの貴方達に!私がどれだけ苦しんできたかなんてわからない!文句を言われても今までは耐えてきた。だけどもう限界!」
彼女は叫び、立ち上がる。
「お母さんと同じ色で大好きだったこの髪も、この目も!可愛くて好きだった名前も!貴方達みたいな人間が文句を付けたからこうした!それなのに……それなのにまた私から何かを奪うの!?いい加減にしてよ!うんざりなのよ!」
クラス中が固まり、教室の中には八上さんのすすり泣く声だけが聞こえる。
「元々はサーシャだった名前も、小学生の頃日本人らしくないっていじめられたわ。身体が大きな男の子に囲まれて指を差された!髪も目もお前だけ仲間はずれだと言われた!」
教室の片隅の席に小さく青い顔をして1人座っていた飯田君かビクリと跳ねる。
「……中学校に上がる前、髪を黒く染めて目を隠すためにカラーコンタクトを入れたわ。高校に入る前、名前も紗綾に変えた。お母さんもお父さんも悲しませた。貴方達にはこの例えようのない苦しみ、悲しみがわかる?何も考えず非難するだけの貴方達に。」
そう言うと八上さんはその場でコンタクトを外した。
その瞳はあの時と同じ青だった。
やっぱり八上さんは八上サーシャさんだった。
「私、貴方達みたいな人間が大嫌い」
そう言うと彼女は鞄をもって教室を出ていってしまった。
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