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「センセー、ちょっと眞を保健室に連れて行きます」
「えっ? ちょっ」
そんな複雑そうな表情をした千尋は泣いてしまった私の腕を引っ張り少し強引に保健室へと連れて行こうとされている。
千尋が私のことを迷惑と思っていないと感じた瞬間、ホッとし「千尋女の子を保健室に連れ込むとか破廉恥よっ!」と、叫んでやり先程までの事を水に流そうと思ったが千尋がいつにもまして真面目な表情をしていたから、それをしてはいけないように感じた。
「なあ、眞、小5の夏休みの最後の日に行った事を覚えてるか?」
そんな中、沈黙を破ったのは私ではなく無粋な傍観者共でもなく千尋であった。
「え、ごめん流石にそこまでは覚えて――」
「お前は俺に対して“千尋ちゃんは私が守ってやるからずっと付いてきて”ってな」
その事を何故か誇らしげに私の腕を握りながら言った後に何かを私に望む様な表情をしながら顔を近付けてくる。
今更だけれど台詞で思い出したが、あれは確か名前で虐められていた千尋を助けたあとに言った台詞だった筈、そしてあれから私達は仲が良くなったけれど……それが一体何なのだろうか。
「……確か、弱虫泣き虫千尋ちゃん、だったっけ? 本当に懐かしいね、あれからもう六年位経ったんだね」
「その渾名は止めてくれ」
しかしまあ、相も変わらず私は千尋を六年間弄り続け、それとは違い千尋はどんどん成長し今は私と弄り合うと言う仲にまで成長している。
そう考えてしまうと千尋がどんどん遠くへ行ってしまう様な気がして少し悲しい。
「けど眞も覚えてたんだな、あの台詞」
「ふふ、だって私とは千尋が仲良くなった所以だもん、忘れるわけ無いじゃん」
そうして私はいつの間にか自然と笑みが溢れていた。……我ながら幼稚園児並みの情緒不安定さだがこれは私としてはいい事だと思っている。
意固地になり素直に感情が出せなくなってしまう。そういうことは絶対に嫌だから。
「やっぱ、お前は変わんねえよ、他の奴らは髪を染めたりカラコン使ったりしてるが、焦げ茶色の地毛と裸眼の赤眼で何も隠そうとしない所がお前の良いところだ」
……やっぱり千尋は千尋だ。私自身が誇っている所を気付いてくれる、それにいつの間に知ったのか私の裸眼が赤眼と言う事も言っているし。
やっぱり千尋は少し変わってもこういう奴なんだね、安心したよ。
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