君と私

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 パッシィン!  その瞬間私の右頬に凄まじい衝撃が走った。……そう、千尋に叩かれたのだ。しかしながら何故今千尋が私を叩いたのかはよく分からなかったのだ。事実を伝え私はもう引っ張って言っていた頃の私とは大違いなんだ。  そんな事を言ったら、何故か叩かれた。 「お前、そう言う事言うなよ」  そして、千尋の顔を見ようとした瞬間抱き着かれて千尋の顔など全く持って見えなくなってしまったのだ。……けれど肩周辺に熱量を持った水滴がポロポロと流れているのだから千尋が泣いていると言う事位は理解できる。  其れでようやく、千尋も私が千尋を想って居た様に、私を同じ様に想って居る事が、私が弱音を吐いたらすぐに反論してくれる。やっぱり千尋は初めから優しくて、けれどいつの間にか私以上に強くなっていた。 「俺だってさ、時々眞の傍に居ていいのか、大丈夫なのか、そんな事位思う事は有る、だけどな、俺と眞の中がそれ程度で崩れる訳が無いだろ?」 「……うん」  この時既に私の心には何か良く分からない感情が、今すぐに千尋から離れたくなってしまう思いとずっとこうして抱き合っていたいと言う矛盾した感情に包まれていた。……いつもと変わらない抱き着きだと言うのに、何でこんな気持ちを得てしまうのだろうか?  何で、今更初めてこのような気持ちを感じてしまって居るのか。 「それにな、秘密にしてたんだが、眞の事、俺は結構好きだぞ、恋愛的な感情で」 「……」  嗚呼、これは恋か、これが恋と言う物なのか、私にとっては無縁だと思っていた恋の気持ちなのだろうか。そう気づいてしまった瞬間今更だと言うのに赤面し初々しい反応をしてしまって居るだろう。  でも、直接千尋から「恋愛的に好きだ」と言う言葉ははじめて聞いて、その所為で私の中でもはじめての感情が沸き上がってしまった。 「だから俺は離れない、眞から離れろと言われない限り俺はずっとそばにいる」 「……」  あぁ! もう恥ずかしすぎる!  何故こんな羞恥責めに合わなければいけないんだ、私が本気で心配して千尋にあの事を言った事も理解していて、千尋も私を心配していてくれて、けれどどうしてこうなってしまったんだ。 「だからお前の意思を聞かせろ。他の誰かのせいにするのではなく、お前自身が思っている事を言ってみろよ」 「ふぁ……?」  何故千尋は此処迄カッコいいのだろうか?
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