君と私

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「……卑怯だよ。此処迄やっておいて」  本当に千尋は卑怯だ、いつの間にあの純情で可愛らしい千尋は穢れて卑怯な大人へと成長してしまったのだろうか、あそこまでの台詞を言われて漸く気付かされて、そしてその瞬間に気持ちを伝えろなどと、落とす気満々じゃないか。  千尋に此処までされてしまうなど、屈辱でしかないけれど、でも、でも……。 「……」  そうして躊躇っていると、更に私を抱きしめる力が強くなる。きっとその台詞を躊躇っている私に対してその言葉を言う様急かしているのだろう。……少し震えているように感じるけれど、これが演技だと言う事はもう分かった。  本気七割、からかい二割、不安一割が主要成分で有る事も伊達に八年近く付き合ってきた中では無く、それ程度は察する事は出来る。  ……でも、流石にその台詞は。 「……千尋は女誑しだよ」 「……」  流石男子と言うべきなのか、それとも憎むべき男子だとでも言うべきなのか、既に私の力では逃げられない程の力で抱き着かれ、更に言えばきっと例の台詞を言わなければならないのだろう。……本当に卑怯だ。鬼畜だ、変態だ。  こんなの、嬉しくない訳、無いじゃないか。 「じゃ、じゃあ、先ずは離れてくれよ、出ないと伝えたいことも、やりたい事も出来ない」  だからせめてもの逃げとして、口にする事をせずに、行動で示す事にした。……少しでも昔の様に千尋に対して優位性を得ようとするために、驚かせようと行動を移した。  んっ。  そしてほんの少しだけ離れた瞬間に、千尋の頬へとキスをした。……その瞬間私は保健室のベットへと押し倒されてしまった。
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