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「わぁ、きれいだぁ」
私がクリスマスツリーを一目見た感想はボケるでもなく、貶すわけでも無く単純な感嘆だった。……付き合ってからと言う物、素直に言葉が出る様になってしまった。
「……そうだな」
こうやって千尋とクリスマスツリーを一緒に眺めていると、きっと私の人生の中で最も忙しいと言えうる今年で起こった様々な事が頭の中をよぎる。……そして保健室の事が頭の中に浮上してきてしまったが。あれは本当に恥ずかしいからやめてほしい。
「なんか、去年までは友達としてきてたけどさ、去年と大して変わんないよね」
「……だったらキスでもするか?」
ほら、もう私が主導権を握ることが出来なくなってしまって居る。本当にこうなってしまうと人間と言う奴もつまらない。……と言うかそれで赤面する初心な私の貞操観念をぶち壊して羞恥心など今すぐに捨て去りたかったけれど。
「本当に、大して変わんないけど、私は完全に眞に惚れたね」
「俺も眞を弄る悦楽を知れたし」
悦楽ってなんだよ、悦楽って。
まあ、けれどずっと前に千尋が言っていた「俺たちの関係はそれ程度じゃ崩れないだろ?」と言う台詞は本気でそう言う風に思えてしまう時が有る。
……と言うか、このまま私か千尋が鞍替えしなければ絶対に結婚ルートは確定な気がするのだけれど、と言うか私達のどちらかが鞍替えとかは絶対にないだろうし。
つまり確定的に私は千尋のお嫁さんになると言う事だ。……嬉しいやら悲しいやら。この言葉はこう言った状況に使うのが最も適切だろうね。
「まあ、それでもさ、今後もよろしく頼むね? 私の大切な彼氏さん?」
「勿論だとも、俺の大切なお嫁さん?」
そして、私達はその年にはじめての事を異常な程体験し、そして周囲はいつも通りのままだけれど、その中でも私達は確実に変わって言っていた。
End
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