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「見間違いかな……」
現場は同じ道路上ではあるが、急斜面が続いていた辺りから、深い草木が生い茂るエリアへとさしかかっていた。
そんな草木が人の動きに見えたりしたのだろうか。
さして深く考えずに発車しようとするとーーー
コンコン。
突然助手席側のドアを叩かれる音にヒッと驚き、ビクつく村瀬。
慌てて顔を向けてみるも、誰の姿もない。
ただただ荒れた外側の様子が広がるばかり……
「何だよ、誰もいないじゃないか……」
コンコン。
「ヒイッ」
今度は運転席側のドアを叩く音に驚いて振り向く。
「……誰も、いない」
またしても誰の姿も見られず、言いようのない不安感に包まれる。
「……きっと、石か何かが当たったんだな。
うん、そうに違いない……は、ハハハハハ……」
いかにもありがちな理由で納得しようと、無理に高笑いをする村瀬だったがーーー
「わあっっっ!!!」
大地震でもきたかのような車体を襲う激しい揺れに、悲鳴をあげてしまう。
強風にあおられてるような感じとは違う、それはまるで、大きな手でつかまれて、上下左右に振り回されてるみたいな……
村瀬は必死にシートベルトにしがみつき、恐怖に顔を歪めて恐怖にさらされる中、ろくに祈ったためしがない神様に懇願する。
「お願いします神様、どうかこの状況から私を助けて下さい、お助け下さい……!」
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