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しかしなんとかしてこの道を渡らないと学校へは間に合わない。他にも道が無い、なんて事はない。しかし、他の道で行こうものなら遠回りとなってしまうのだ。
十字路のすべての道から一つの道へ向かって迫り来る小学生軍団をなんとかして避けながら行くしか道はない。
多少時間は掛かるが、遠回りするよりはマシだろう。そう考えながら小学生達を難なく避け、一つ、また一つと学校へと近付いて行く。
「ハァハァ……残り……3分だと……!?間に合うのか!?」
歯を食いしばり、俺は最後の力を振り絞って、足を動かした。前へ、前へ前へ。
膝を曲げてはならない。ただその事だけを考えながら、滝の様に大量に流れる汗を軽く拭いながら学校へと向かう。
遂に校門が見えた!もう少しだ。もう少しなんだ……!!
あと数歩。息を荒げ、ゆっくりと流れる時の流れを感じながら、目の前の校門へ目掛けて全力でカバンを投げつける。
それと同時に始業のチャイムが鳴り、ホームルーム開始の合図が学校全体に轟き始める。
校門近くにいた先生が俺に向かって「紅田、また遅刻か。」と言い呆れた溜息を零す。
「……カバン、入ったでしょ……遅刻じゃないですって……」
「無駄に抗うな。そもそもチャイムが鳴る前に教室に居ないとそれもう遅刻だから。それと、カバンを投げるな。危ない。」
……俺は今日もまた、学校を遅刻した……。
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