ミスマッチな二人

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ある女の話をしよう。 そいつの名前は、カズキ。 早田、カズキ。 腰まである流れるような黒い髪に、目を合わせたものを萎縮させる鋭い目つき。 それから、ぶっきらぼうで乱暴な口調。 顔は全然美人な方に入ると思う。成績も運動神経も申し分ない。だが正直、クラスの人間からは快く思われていない。 なぜ俺がこんな話をしているのか、というと、コイツとは少しばかり因縁のようなものがあったんだ。 何せコイツ、転校初日に俺のことをビンタしやがった。 理由を問いただしても、うるさい、黙れ、の一点張り。 一度根気強く粘ってみたら、黙れ、お前は女か! と罵られた挙句、またビンタを食らった。 それ以降、俺とアイツは互いに不干渉を貫いてきた。 それが変わったのは、11月の終わり。 文化祭まで、残り二週間を切った時だった。 「はーい。というわけで、俺たちの学年は劇をやりまーす!」 教室の中で軽くどよめきが起こる。周囲を見てみると、あぁ、やっぱりそうなるよな。 こういう場合は二つに分かれるんだ。 一つは意欲的に参加し、演者に立候補する目立ちたがり屋。もう一つは参加には消極的だが何もしないわけにはいかないから裏方に回るもの。 そう言えば、アイツはどうなんだろう。 アイツの席を探すと、机に伏していた。いや、恐らく寝ているわけではないだろう。ただ、参加したくないという意思表示だ。アレは自己防衛の証だ。 「脚本は、いないよな。うーん。そうだ、おい、 早田」 「……んぅ?」 「へ?」 同時に声が上がる。明らかに教師の視線はアイツを捉えていたのに、だ。 アイツが眠そうに目をこすりながら起きる。どうやら寝てたという体で行くらしい。 「ん? あ、すまん。早田カズキ」 「なに」 「はい?」 またしても同時に声が上がる。教師は面倒くさそうに頭を書く。 「はぁ、面倒だなぁ。よし、じゃあお前ら二人、脚本な」 「なんで私が……」 アイツが髪をかきあげ、口を尖らせて唸る。いかにも気怠げなその態度、それが原因だと気づいてないのか、アイツは。
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