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差し出された模擬刀を受け取ったものの、どうしたものかと姉ちゃんの様子をうかがう。
これはたぶん姉ちゃんが趣味で買い集めてたものの中の一振りだろうけど、俺はろくに触ったこともない代物だ。
すらり、と姉ちゃんが刀を抜く。
「え、ちょっ、抜くの?」
「抜かずにどうするというんだ」
抜かずにどうするって言われても困る。
抜いたところで、どうすればいいのか俺にはわからないって。
「姉ちゃん、いいのか?」
「構わない」
「本当にいいの?」
「いいと言っている」
姉ちゃんの目が若干据わってる。
「いや、でもさ、これ、高かったんじゃないの?」
うっ、と若干姉ちゃんが怯んだ……ように見えた。
受け取ったとき、あ、重い、と思ったんだ。
竹光じゃない。
「か、構わん」
「このままもし俺も抜いて、刀身がぶつかったら、痛むんじゃないの?」
刃はないだろうから、刃こぼれするってわけじゃないと思うけどさ。
「くっ……。くそ、少し待っていろ!」
姉ちゃんは抜いた刀を手慣れた動きで鞘に納めると、すすすっと俺の部屋から出て行く。
いったい、なんなんだよ……。
俺は手元に残された模擬刀を眺めながら、ため息を吐いた。
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