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姉ちゃんが出て行って、部屋は静けさを取り戻した。
待ってろ、って言ってたってことは、また戻ってくるのかもしれないけど。
俺はPCのモニターへ目を向けた。
ブラウザゲームと、動画サイト、それに、さっきまで巡回してたSNSのウィンドウが開いたままになっている。
巡回してたのはネットで知り合った人たち、中学の頃の連れや、高校のクラスメイトのアカウント。
夏休みをそれぞれ楽しんでいる様子が伝わってくる。
インドアの連中は、それぞれ熱中してるゲームのリザルトだったり、ガチャで引いたカードだったり。
リア充は、出かけた時の写真をアップしている。
友だちとの写真、彼女との写真――。
肩に手を回して、すっげえ楽しそうな顔で写ってる。
みんな、楽しそうだ。
――俺だって、充分楽しんでる。
夏休みがもっと続けばいいと、思ってる。
それは嘘じゃない。
だから――。
「待たせたな!」
再び現れた姉ちゃんは、今度は木刀を持っていた。
「いや、別に待ってないし――」
「受け取れ!」
聞いちゃいない。
姉ちゃんは、二本持っていた木刀のうち、一本をこちらへ投げる。
「ちょっ! 俺、既にさっき渡された刀持ってんだけど!」
どうすんだよ、と困惑しながらも、とっさに左手でその木刀を受け取る。
ふふふ、と姉ちゃんが不敵に笑う。
嫌な予感しかしない。
「さあ、抜け」
姉ちゃんがこちらに木刀の先を突き付けて言った。
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