1人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
俺が木刀を受け取ったとみるや否や、姉ちゃんがこっちに踏み込んできた。
「ちょっ、本気かよ姉ちゃん!」
「無論!」
「やめろ! こっちにはパソコンだってスマホだってあんだぞ!」
躊躇なく振り下ろされた木刀を、俺は鞘に入ったままの模造刀で受け取めた。
「やるな」
「やるな、じゃないだろ! こんな夜中に騒いだら、母さんにぶん殴られる!」
「やむを得ん!」
姉ちゃんがぎりぎりと木刀を押し込んでくる。
俺の背後にはパソコンとスマホ。
相手は姉ちゃんとはいえ、なにかを守りながらの戦いじゃあ、不利だ。
「やむを得ん、ことないだろ!」
俺は木刀を押し返して、その隙に姉ちゃんの脇をすり抜けると、自分の部屋から飛び出した。
「逃げるのか⁉」
「つきあってらんねーし!」
母さん怖いし!
「待て!」
案の定、姉ちゃんが俺を追ってくる。
「姉ちゃん、足音立てるな!」
廊下を走る音で、母さんが起きるかもしれない。
「承知!」
そこは承知すんのかよ、とつっこみたい気持ちをひとまず抑えて、俺は縁側から庭へと飛び出した。
最初のコメントを投稿しよう!