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「きえ――――っ!」
「姉ちゃん、声っ!」
でけえんだけど!
深夜なんだけど!
これは、短時間で決着しないと、絶対母さん起きてくる。
姉ちゃんの面を木刀で受けながら焦る。
とはいえ、姉ちゃんは強い。
木刀は、竹刀より硬いし重いし、衝撃もある。
剣道をやってたって、木刀を素振りのときに使うことはあっても、打ち合うことなんてない。
こんなものを人に向けて振ったら、絶対怪我させるし、自分だって手首やらなんやら痛める。
今回みたいな例外中の例外の場合、どうしてもやりあうっていうなら、木刀のほうが重い分、男のほうが有利な気もするけど……。
すれ違って、互いに向き合う。
「余計なことを考えている場合か? こいよ」
煽られて、ざり、と裸足の足の裏が音を立てる。
こいよ、っつったって、面――はさすがに防具をつけてないのにまずいだろ。
姉ちゃん、さっき思い切り打ち込んできたけど。
ああもう、確かにうだうだ考えててもらちが明かない。
とりあえず、姉ちゃんからあの木刀を取り上げれば勝ちだ。
俺は、姉ちゃんへ切りかかった。
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