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ぜぇ、ぜぇ、とふたりとも肩で息をしていた。
「姉ちゃん……もう、やめ……」
「まだまだぁっ」
やめようぜ、の言葉は、あっさり姉ちゃんに遮られた。
自分に向って振り下ろされる木刀をなんとか受け止める。
「姉ちゃん、なんで……」
「自分の胸に訊いてみるんだなっ」
そんなこと言われたって――。
「わっかんねえよ!」
力任せに、姉ちゃんの木刀を押し返す。
姉ちゃんが下がった。
次の瞬間、カァン、と高い音が響いて、俺の木刀がふっとんだ。
あっ――。
相手の木刀を押し返してできたわずかな隙を、姉ちゃんに狙われた。
姉ちゃんに読まれてたんだ。
ブン、と音がしたかと思うと、姉ちゃんの木刀の先が、俺の鼻先に突き付けられていた。
やられた。
「そこまでっ!」
鋭い声が投げ込まれる。
びくっとして声のした方を見ると、鬼の形相の母さんと、その母さんを押しとどめるように立つじいちゃんの姿が縁側にあった。
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