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「ああ、そういえばあったような気もするな。そうだ、めちゃくちゃ軽くてビックリしたんだ。女子より細いし軽いし、こいつ何を食って生きてんだって思ったんだ」
ふわりと綿菓子のように持ち上がった御厨の体に怖ささえ感じたのを思い出す。
「でね、その時、蜂矢ってばお姫様抱っこしたのも覚えてる?」
「それ以外、運びようがなかったし」
隣の席で真っ青な顔で今にもイスから倒れそうな御厨を見た瞬間、驚いて抱き上げてしまった。
「ふふ、でね。とにかく気持ちが悪くてどうしようって、意識がね曖昧だった瞬間急にふわって体が浮いてさ。ああ倒れたのかなって思ったら違って。蜂矢の強い心臓の音が聞こえた。たくましい腕の中にいるんだってわかって、あの時の驚きったらなくて……」
御厨は嬉しそうにほほ笑むとぎゅっと両手を組み合わせた。
「その時、急に分かったんだ。蜂矢のことが好きだったんだなって」
「え……」
いたずらを告白する子供のように無邪気におれに笑みを見せた。
「好きだったんだ。蜂矢のこと」
「御厨……」
「羨ましかったんだよずっと。蜂矢と仲良くしてる子たちや、一緒にふざけたり、触れたりしてる子。だから蜂矢がそういうことしてるのを見て、いいなって。おれもしたいなって、思った」
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