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どう答えたらいいのかわからなかった。
「そうか」というのも「ありがとう」というのも違うだろうし「知らなかった」「言ってくれればよかったのに」というのも何かおかしい。困った様に口をつぐんだ俺に眉を寄せながら御厨は首を小さく降った。
「ごめん、困らせるつもりはなかった。でも今言わなきゃもう伝えられないって思って」
「……うん」
こんな時、昔のおれなら気の利いたことを言ってもっとスマートにやることができたのかもしれない。
でも暑さのせいか、告白することで高揚した御厨に当てられたせいか、おれは何も考えることもできず彼の腕を掴んだ。
「今は?」
まっすぐに見つめて問いかけた。
「今もそういう気持ちある?」
「……今、も」
潤んだ瞳がまじかで揺れる。
「今も、あるよ」
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