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抱き寄せて触れた唇はひんやりとして乾いていた。
緊張でがっちりと固められた唇を舐めると御厨の細い体は余計にこわばり固まっていく。
「こういうことしてみたかった?」
おでこを合わせながら問いかけるとぎゅっと閉じられたままだった瞳がうっすらとあき「うん」と掠れたように答える。
「あの時もこうやって蜂矢と誰かが重なってた」
「うん、多分こういうことしてたよ」
おれの中の記憶はもうない。
相手が誰だったかとか、どこまでしてたかなんて覚えてもいない。
もう一度唇を合わせる前に囁いた。
「べーっ舌出してみ」
「こう?」
「そう」
薄い桃色で小さな舌がのぞいていた。それに先端を合わせると御厨は驚いたように一歩退き、おれはそれを逃さなかった。
「やらしいキスしよ?」
「や、やらしい……?」
「そう、もっとべってしてみて」
おれの言うままに御厨は舌を差し出した。絡めとり味わうと腕の中で体を竦ませている。だけど今回は逃げようとはしなかった。
いじらしく施される刺激に応えようとしがみついてくる。
後にも先にもこんなに興奮するキスをしたことはなかった。夢中になって貪っていると息を荒くした御厨に押しのけられてしまった。
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