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「苦しい……っ、から」
「ごめん」
いつも涼しげに大人しそうな御厨が今は違う人に見えるようだった。甘い息を吐きながら色を纏った視線を不安げにさまよわせている。
ごくりと喉がなった。
さっきから下半身はやばいことになっている。
お墓参りに神聖な気持ちできていたはずが、ごめんばあちゃん、俗世に染まりきってもっと溺れたいと思っている。
「どうする?」と問いかけた。
このままここで先に進むのはさすがに気がひける。見つかってもエライことになるし、進むか戻るか、それは御厨次第だ。
一瞬の迷いも見せずに御厨はおれの腕をとった。
「もっとおれに教えて」
そこから先は早かったと思う。
来た道を急いで戻り、流れてきたタクシーを拾い行き先を告げた。繁華街に出ていけばホテルはすぐにみつかるだろう。
いい大人だし安っぽいホテルではなくそれなりのところにしようとしたら、ラブホテルに行ってみたいとリクエストをされてしまった。
「きれいなところじゃなくてもいいのか?」
「うん、一度行ってみたかったから」
運転手に聞こえないようにヒソヒソと会話をした。こっそりと繋いだ手を性的な動きで刺激すると御厨はそっぽをむき、窓の外をじっと見つめたまま動かなくなった。
見るとちゃんと反応しているから、ここからもう始まっていることはちゃんと伝わっているのだろう。
御厨がいじらしく、愛おしく思えてくる。
全力で気持ちよくして、後悔なんかさせたくない。
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