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それより、と先を促した。
「どうする?シャワー先に入る?それともお湯をためて一緒に入る?」
「えっ、シャ、シャワー……?」
「このまま始めてもいいけど今日は暑かったからかなり汗かいてるし、おれとしては入りたいんだけど」
たまにそのままの匂いが好きだというやつもいるけど、どちらかといえば清潔に触れ合いたい。
御厨は困ったように視線をさまよわせていたけど呟くように答えた。
「い、っしょに、入りたい」
「わかった」
すぐにバスルームへと向かい、バスタブにお湯を張った。入浴剤が選べるようになっていて御厨を呼ぶと瞳を輝かせて選び始めた。
「すごいな、蜂矢。見たことのない入浴剤ばかりだ」
「好きなの選んでいいよ」
「いいのか?嬉しい」
こんなことくらいで喜ぶとは思ってもいなかった。なんだか胸の奥がムズムズとしてくる。
「飲み物も好きなの選べばいいよ」
「ありがとう」
大胆かと思えばひどく純情で、びっくりすることを提案するくせに素直で調子が狂う。教室にいた御厨はもっと大人しくなにもできない人という印象だったのに、けっこう積極的に何かを楽しもうとする人だったのかもしれない。
選び終えた入浴剤を入れるとバスタブはみるみる泡だらけになって行った。
「泡の立つ入浴剤って映画で見たことがあるんだけど実際にあるものなんだな」
「まあ日常使いはしないかもしれないけどな」
「見て、蜂矢。すごいこんもりとした泡!」
そう言って楽しそうに笑った御厨はものすごく可愛くて、おれは息をのんでしまう。
なんだろう。愛おしさが募る。
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