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うとうとと眠りの手前を漂う。
「なあ」と半分眠りかけたまま声をかけた。
「また会おうな」
学校にいた時は違うグループだと思って深く関わることはしなかった。だけどこうやって大人になって接してみると御厨はとてもいいやつだったし、相性だって良かったと思う。これで終わりにするには忍びなかった。
だけど御厨は寂しそうに笑みを浮かべるだけだった。
「蜂矢、おれね、本当に幸せだなって思ってる。こんなこと、起こるなんて思ってなかったし……もう諦めてた。だから最後に素敵な思い出をもらえて嬉しいんだ」
「最後って、もう会わないってこと?」
御厨は目を伏せた。
「うん」
「なんで?おれはまた会いたいよ」
これからももっと御厨をしりたいし、抱き合いたい。
「ありがとう。そう言ってもらえて幸せで泣きそうだ。もっと早く再会したかったな」
「これからもっとたくさん会えばいいじゃん」
なんで御厨が最後だなんて言うのかがわからなかった。もしかして寝たみたら幻滅したってことだろうか?
そう問いかけると驚いたように目を見開き「それは違う」と強く否定した。
「ほんとにね、幸せで気持ちよくて、大事にしてもらったのがわかって、嬉しいんだ。もっと抱き合いたいよ。これからもずっと、一緒にいたい」
でも、ダメだと思う。
そう呟くと御厨はしがみつくようにおれの体に腕を回し、満足そうな息をついた。
「ありがとう。最高の経験だよ」
そのまま静かに寝息を立てた。スウスウと気持ちよさそうに笑みを浮かべながら眠っている。
その寝顔を見ていると、やっぱりこのまま終わらせたくはないと思ってしまった。今は眠ればいい。そして次に目が覚めた時、もう一度話し合おう。
おれは御厨ともっと一緒にいたい。
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