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「お前な!」と声を荒げてしまった。
いったい何が目的なのかさっぱりわからないけど、しつこすぎるし冗談にしてはひどすぎる。
「御厨のことどうしたいわけ?なんでそんな嘘ついて回ってんだよ」
「嘘じゃない!」
受話器越しに本橋も叫んだ。
「君が昨日会ったっていうのこそ、嘘だろ。そんなことあるはずないんだ。他人の見間違いだったんじゃないのか」
「そんなはずないだろ!」
だって。
あんなに強く交わったのに。あれが他人のはずがない。
「あれは御厨だったよ」
「じゃあ」
本橋は苦々しげにとある住所を告げ、今からここに来ればわかると言った。御厨の家の住所だ。
確かに御厨本人に会えば決着がつく。どっちみち会いに行こうと思っていたから「わかった今から行く」と答えた。
「お前もこいよな。嘘だったらマジでおぼえとけよ」
怯むかと思ったけど、本橋はため息を返してきただけだった。
電話を切った後もものすごく気分が悪かった。さっきまでの甘いセンチメンタルな気持ちもどっかにいってしまった。
なんで御厨はあんな奴と仲良くやっていたんだろうか?あんな奴と一緒にいるくらいなら、おれといればよかったのに。
「くそ」
着替えて住所を控えると家を出た。母親が「もう帰るのー?!」と慌てて追いかけてくる。
「ちょっと友達んとこいってくるだけだから」
「え、友達いたの……?」
ほんとにどいつもこいつも失礼な奴ばっかりだ。
「いるよ!」
べーっと舌を出すと笑っている母親に背を向けて歩き出した。御厨の家はそう遠くもなかった。
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