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アプリを見ながら住所をたどると徒歩圏内に御厨が住んでいたことが分かった。中学までの校区からはちょっとだけ外れていたのだろう。
あともう少し近かったらずっと同じ学校に通えていたのかもしれない。そしたらもっと早くから仲良くなれていたのかな、と口元を緩ませた。
小学生の御厨も、中学生でほんの少し大人びていった御厨もどっちも可愛かっただろうな。今度卒アルを見せてもらおうと楽しい未来に思いをはせる。
先日までの暑さが嘘のように今日は風がひんやりとして気持ちがいい。
もうすぐ秋めいてくるのだろうか。そうしたら寒がりな御厨を温めてあげたい。
楽しいことを考えていたらあっという間に御厨の家へはたどり着いた。
彼のイメージ通りの清潔できれいに整えられた外観だった。よくあるような住宅なのに住人たちの個性が出てくるのはなぜだろう。
ここで彼が生活をしてるのは容易に想像がつく。
だが楽しい気分は間もなく消えていく。
チャイムを鳴らすまでもなく人の動きが多く、たくさんの大人が出たり入ったりを繰り返している。
考えたくもないけど地味で悲しみをまとった色の服装なことに心臓が嫌な音を立てた。
「すみません」
変な汗をかきながら声をかけると腕まくりをした男の人が何事かと振り返った。
「あの……御厨はいますか?」
「え?」
怪訝そうに聞き返され、ここにいるのはみんな御厨さんなのかもしれないと思い当たり訂正をする。そういえば名前で呼んだこともなかった。
「光くん、いらっしゃいますか?」
「……」
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