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男の人は残念そうな憐みの表情を浮かべると「お友達かな?」と聞いた。
「お友達っていうか……はい、そうです」
今の自分たちの関係っていったい何なんだろう。友達ではないような、恋人とも呼べない曖昧な関係。
「そうか。残念だったよ……顔を見てあげなよ」
ぽんと肩をたたくとその人は小さく頭を下げ、またどこかへと小走りで行ってしまった。
嘘だろ。
サアーっと音を立てて血の気が失せていく。
まさか。
そんな。
朝方、抱き合いながら幸せだと笑ったのは御厨だ。間違えようがない。おれたちにしかわからないような会話をし合ったし、あんなに強く抱きしめたのも嘘じゃない。
あれからいきなりこんなことになったのか?
もしかして双子の兄弟とか?それで急いで帰ったとか?
ぐるぐると考えはまとまらず一歩も動けない。
唇をかみしめてただ忙しそうな人の動きをみつめていると後ろから肩を叩かれた。振り返ると本橋だった。
「な。うそじゃないだろ」
そういった彼の目は真っ赤に充血し、力なくうなだれた。
「おれだって信じたくないよこんなこと」
「だって」
今朝まで御厨は。
「卒業してからずっとこんな感じだった」
本橋は俯いたままぽつりと呟く。
「もともと体も弱かったし、高校までは何とか通えたけど……卒業して間もなく入院してさ。その時にはあまり長くないって。でも10年がんばった」
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