179人が本棚に入れています
本棚に追加
怯んでいると母親が隣に寄り添い「亡くなってるなんて信じられないわよね」と呟いた。
「これは本当に御厨なんですか?」
今朝まで腕の中で甘えていたのに。
「会ってあげて」
「……」
覚悟を決めて布をそっと外す。
間違いようもなく御厨本人だった。
真っ白い肌はさらに白く蝋に覆われているかのようにしっとりとしている。
___蜂矢が好きだよ。
はにかんでそう囁いた唇は固く閉ざされたまま動かない。
「……おれ会ったんですけど」
冷たく動かないほほをそっと包んだ。
くすぐったそうに嬉しそうに笑いかけてこない。
「今朝まで。一緒だったんですけど」
再会してからまだ一日も経過していない。
昨日の今頃、祖母のお墓の前で声をかけられたのだ。久しぶりって、懐かしそうに微笑んで。
「いつですか」
一緒にいたのは御厨本人だったのか。
おれの腕の中にいたのは。
御厨の母親は黙って部屋のドアを閉めた。
ひそひそとした話し声が聞こえなくなる。
「ちょっとだけお話してもいい?」
彼女はおれの隣に座ると御厨のほほを撫でた。
「光は生まれた時から体が弱くてね。いつまで生きられるかわからないって言われていたの。学校も休み休みで……あまりお友達もいなくてね。入院も多かったし人生を諦めているような顔をよくしてたの」
丈夫に産んであげれなくて申し訳なかった、と彼女は声を震わせた。
「だけどね」
ふいにその表情が明るくともる。
最初のコメントを投稿しよう!