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それをどう捉えたらいいのか、よくわからなかった。
ごくりとのどが鳴る。彼女の話の続きを早く聞きたかった。
「いい夢を見ていたんだねって言ったら、違うよって。蜂矢に会えたんだって。意識も混濁してきたのかもしれないってその時は思ってね……そうなの、よかったねって、流してしまった」
人は最後にはあちらとこちらを行ったり来たりして、半分夢うつつに過ごしているらしいとよく言われている。
そのせいで見たかった夢を見ていたのかもしれないと、涙を呑んでいたのだと続けた。
「そのあと少しだけ話ができてね。蜂矢に出会えてよかった。最後に会えてうれしかった。こんなに素敵な人を好きになれた自分は幸せだったって、そればかり。聞いているこっちが恥ずかしくなるくらい、正直な気持ちだったと思うわ」
そして間もなく終わりの時が来たのだ。
「息を引き取っても嬉しそうに微笑んでいたあの子は、最後に本当に幸せな状態でいけたんだと思ったの。悲しいけど嬉しいような……そしたら本物の蜂矢くんが来てくれたじゃない?もうびっくりしたわ」
「御厨は……」
最後の気力を振り絞って会いにきてくれたのかもしれない。
「これも変な話ですけど……昨日御厨に会いました。彼から直接たくさんの気持ちを伝えてもらいました」
「……」
御厨の母親はじっとおれの言葉を聞いてくれている。
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