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「まこちゃん!」
はっとして、顔を上げた。その瞬間、真っ暗に閉ざされていた真琴の世界に光が射し込む。
「ごめん、待った!?俺、もうちょい早く来ればよかったかな、ほんとにゴメン!!」
タクミが、立っていた。息を切らしている。真琴の姿に気づいて、走って駆け寄ってきてくれたのがわかる。
明るい色の彼の耳元に、星形のピアスがついていることに気がついて泣きそうになった。誕生日のプレゼント、使ってくれたのだ、彼は。
「……ううん、こっちがちょっと早く来すぎちゃっただけだから。気にしないでよ」
真琴は、思わず滲みそうになった涙を誤魔化すように笑みを作った。時計を見れば待ち合わせの五分前。彼はけして遅刻などしていない。それどころか、早めに来て自分を待っていてくれようとしたのだとわかる。
きっと、真琴が時間を必ず守ると知っていたからだろう。もしかしたら、真琴が待ちの時間を苦手としていることにも気づいてくれているのかもしれない――なんて、そう思うのはさすがに傲慢だろうか。
「相変わらず、すっげー人だなぁココ。しかも見事にリア充ばっか」
「そりゃそうだよ、ハチ公前なんだしさ」
「だよな。じゃあ、俺らもリア充になってみる?」
ほれ、と。タクミが手を差し出してきた。それを見て、一瞬躊躇してしまう真琴。冗談でも済むように、それでいて気軽に手を繋げるように――そんな配慮で手を差し出してくれた、彼。
これを逃したらもう、タクミと手を繋げる機会なんてもう訪れないかもしれない。でも。
――ねえ、この手を握ってもいいの?
自分に、本当に――この手を握る権利は、あるのだろうか。
――タクミが好きだよ。…本当の本当に…大好きなんだよ。でも。
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