1.拝啓

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都会から少し外れた場所に位置する馬鹿でかい建物。 これが俺が2年間を過ごす場所となる。らしい もうそろそろ春休みが終わる。 世間の学生が課題を慌てて終わらせようと足掻き始める3月下旬。いや新たな生活に心を踊らせている人もいるかもしれない。 寒さも薄らいで、暖かい日差しの中電車とバスを乗り継いでやっとたどりついた。 高校といっても全寮制であるようで、手続きやら準備やらでしばらく忙しくなる。 休みである今のうちに環境は整えようということで少し早めの登校だった。 我が家は転勤族であり、結構な数の転校を繰り返してきたわけで。またいつものか、なんていって両親に言われるがままここに来たわけだが。 いや、来てみてびっくり。 どこにそんな金があった。 きらびやかな門の先にはずっと続く道。しっかりと管理されている木々や噴水。どっからどうみても普通の学校ではない。アミューズメントパークかよ しかももう一度言うが今回は全寮制。俺の高校生活、青春は全てここにあるらしい。 さて、この先に軽い絶望を抱いたことで5分くらい門の前で時間を潰した。 """転校のプロ"""上野ならばそろそろ入るべき頃合いだ。 学校側曰く、門をくぐって真っ直ぐ進んだ先の建物にきちんと西宮高校 (この学校は西宮高校というらしい。「一人一人の個性を大切にし、のびのびと生活できる環境を」というスローガンと一緒にパンフレットに書かれていた) の生徒さんを用意してくれているらしい。 俺としてはこの門をくぐってこの学校の道を踏んだ途端、「貴様ア!この土地を汚しやがって!」とか言われそうなのでぜひともここまで迎えに来ていただきたい。 僕だって東京湾には沈められたくないです。 最初の一歩は誰だって怖いのよ。 でもセキュリティ云々の話で外に一人でいると危険だったりするんだろう。知らないけど 一応門は常に開いているようなので、腹をくくって敷地へと足を踏み入れる。 「おーい、そこの君!」 踏み入れた瞬間に職質みたいな呼び掛けをされた。やめて!
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