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「そういえば、メールで連絡寄越したよな?」
解決案か妥協案かよく分からない助言をもらったな、などとぼんやり考えていると、仕事の連絡を終えたらしい千代田が目線を液晶からこちらに移した。
「悪いかよ」
「電話ならすぐ気付いてやれたのに」
「電話だと千代田がドキドキしちゃうかなって」
「嘘」
嘘ってなんだよ。気付かれたくないけど気付いてほしい、この乙女心を分かれよな。
「ドキドキはしねぇから、こういう時は電話にしろよ?」
「嫌だね」
「電話しろよ?」
「嫌だ!!」
「じゃあ理由を言え」
「察せよ。」
こういう時に電話なんてできるか。こういう時だからメールにし………いや俺はメールなんて送ってない、この記憶は抹消した。
「あんなメール送っといて、直接顔見たら素直になれないのか」
やめろ。にやついた顔で携帯を操作するな。今更俺の気狂い文面を掘り起こそうとするな。あれは無かったことにしたんだ。
「メールはそのね、千代田が喜ぶかなって、ね」
「お前、動揺すると千代田って呼ぶのな」
「………。」
あれは俺の第二人格が出ちゃったの!あの時はなんか寂しくなっちゃったのよ!だから手が動いてね、さみ、あ"ーーーそのねセンチメンタル上野が吐露しちゃったのよねその気持ちをね!!!、!メールに乗せてね!!
上野もう顔を覆うしか無くなっちゃうよ。
「恥ずかしい?」
「……………………この話止めません?」
「顔見せろ」
「無しよりの無し」
「上野表情に出るタイプじゃないから変わんないぞ。ほら、見せてみろー」
「マジまんじ?」
「喋り方どうにかなんねーのか」
上野は隠し事のうまいポーカーフェイスらしいので、手を退かす。心なしか視界がボヤけて手がぽかぽか温かいのですが。気のせいですかそうですか。僕は伝説のポーカーフェイサー。
「良い表情してるな」
「お前はAVカメラマンか」
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