天使と守護者

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 音が立たないように静かに君の部屋の扉を開ける。時刻は1時。そっと部屋を覗くと、君はベッドの上でいつものように天井に貼られたポスターと向かい合って眠っていた。小さい吐息が聞こえる。その寝顔に安心して部屋にすべりこむ。  見慣れた君の部屋。ただ今日はいつもと違い制服が壁にかけられておらず、床に乱雑に脱ぎ捨てられている。普段はそこに漫画本が落ちているのに。本棚に置かれた君のお気に入りのぬいぐるみも、今日はあさっての方向を向いていた。君が感情のまま壁に投げつけようとして、でもできなかったリンと名付けられた犬のぬいぐるみ。君が優しい子で本当に良かった。私はリンに手を伸ばす。今日も君の聞き役になってくれた、リン、お前にはいつも感謝しているんだよ。軽くリンの頭をなでて、眠る君を見つめることができるよう、位置を正した。  そっと君に近づく。君の頬は涙で濡れていた。  自己嫌悪してしまうが、それでも綺麗だと思う。それが君が傷ついた証だとわかっていても。それは暗闇に光る宝石のようで。睫毛にはまだ悲しみの雫が零れることなく残っていた。静かに手を伸ばして涙を掬い取る。 「う、うぅん……」  君は小さく呻くと、寝返りをうって私に背を向けてしまった。やがてすーすーと穏やかな寝息が聞こえてくる。
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