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天使と守護者
天気予報の言っていた通り、漆黒の空から雪が降ってきた。指先が冷たい──息を吹きかけでもして少しでも熱を伝えたいところではあるが、そのためには手袋を一度外さなければならない。それこそ本末転倒な行為ではなかろうか、仕方なく布地の上から白い息をはく──当然意味はない。気象予報士の話では明け方までにうっすらと積もる程度になるらしいが、たとえ雪が1メートル積もることになろうと寒いことに変わりはないだろう。ポケットでカイロ代わりにしていた缶コーヒーもとうに冷たくなっている……ちらと腕時計を確認すると12時を回っていた。君の部屋を見上げる──今日はいつもより眠るのが遅いようだ。カーテンの隙間から漏れる明かりはまだ消えていない。学校でのことを思い出していて眠れないのだろう。静かな夜に、まだ君のすすり泣く声が小さく聞こえ続けている。せめて泣きつかれて眠ってくれたら……夢にいる間だけは涙を流すこともないだろうに。
『──ごめん。そういってもらえるのは嬉しいんだけど、その気持ちには答えられない』
『えっ……ど、どうしてですか?だって先輩私に……』
『付き合ってる人がいるんだ。だからその──ああいうことをしてしまったのは本当に悪かったって思ってる。ごめんな』
なにがごめんだ。謝罪してどうなるっていうんだ?罪は謝れば許されるとでもいうのか?傷は、消えるとでも?
胸の中にドロドロとした不快な感情が回る。まるで溶岩のようで私の身体を熱くするが、だからといってそれで寒さを凌げるわけでもない……。
長い夜になりそうだった。ただじっと、君が眠りにつくのを待つ。
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