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おじいちゃんは無言で私を見つめている。
「だから、青い青い言うのやめて、ください」
お父さんを呼び捨てにしてしまったのは後にも先にもこれが最初で最後。おばあちゃんになりきるため。ごめんなさいお父さん。
おじいちゃんは私から視線をそらし、うつむいてしまった。おとなしくなったみたいでかえって緊張する。
「お願いだから、話を聞いてあげて」
言いすぎてないよね。大丈夫だよね、おばあちゃん。
おじいちゃんは自分の手のひらを見つめている。畑仕事でタコだらけで節々の太い手。
「青二才、青びょうたん、青っぱな。子供の言うことはみんな青いんだよ」
言うことはいつものおじいちゃんだけど、怒鳴ったりはしていない。
「せいこだってここを離れたくないだろ」
田舎の家は雨戸がガタガタ鳴って、ハチが遠吠えして、スイカの種が多い。いとこの清太は虫がいっぱいいて楽しいと言ってるけれど、私はそんなの全然プラス要素じゃない。
「なぜ黙ってる、はっきり喋れ」
おじいちゃんは、おばあちゃんとふたりきりだと怒鳴らないんだ。
「え、えっと、いつまでも、ひとりきりでは暮らせないでしょ」
「あと10年は大丈夫だ」
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