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①
「亮、お前も今年で30なんだから、いい加減に落ち着けって…」
目の前のテーブルに差し出された白い二つ折りの紙。
見合い相手の写真だ。
もう、何度目だろう? オヤジの奴、ついに兄貴を寄越しやがった…
こんな話をするには、全く似つかわしくない喫茶店。
指定したのは俺だけど。
BGMには今、流行りの曲が流れている。外は晴天だ。
いつまで経っても開こうとしない俺に、業を煮やしたのか、兄貴が
「写真くらい見ろよ…」
と軽くため息をつきながら、その白い紙を開く。 目の端で一応チラッと見る。
見るからに良家のお嬢様という感じの、ありがちな清楚系。
兄貴がプロフィールを読み上げる。
「○○ ○○。二十歳。身長155cm。趣味は音楽鑑賞…」
でも、出るトコは出て、引っ込むトコは引っ込んでという…
俺の好み、解ってないな。
「…だそうだ。」
途中から聞いてなかった。
が、内容なんて決まってる。
「またかよ」取り敢えず反論する。
「その、俺より背の低いの探してきたぞ的なプロフィール」もう、うんざりだ。
「オヤジは何故そこまで身長を気にするんだ?」
兄貴は苦笑しながら「さあな…」とだけ答えた。
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