久しぶりを言わない

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 それから色々聞いたけど、普通だったら信じられないことばかりだったけど、とりあえず信じることにした。  というか、どっちでもよかったんだ。  なんだか知らないけど、おそらく神様みたいなのが気まぐれに、勝手な気をきかせてこいつを藤岡弘にしようと星型の島に送り込んで、十分藤岡弘に近づいたか超えたかで、こいつをこちらに返してくれた、ということだろうって、勝手に納得することにした。  私はこいつが生きていたことにも、ムキムキになって帰ってきたことにも、何故藤岡弘を目指した最終到達地点がサーフィンなのかにも、疑問も何もなかった。  戻ってきてくれてよかった。それだけだ。  だから、私が現実逃避している理由は、そこじゃない。 「僕ね、強がりに思われるかもしれないんだけど、こうなれてよかったって思うんだ」 「藤岡弘になれたから?」 「それは、なんていうか、過程でね」 「どういうこと?」 「えっと……」  大男がもじもじするのは、ちょっと面白くて笑いそうになったんだけど、 「僕、さっちゃんのこと好きなんだ」  また腹筋が痛くなることはなく、表情筋が固まってしまうだけだった。 「……あんたが、私を?」 「そう、です」 「そのために、藤岡弘を目指したの?」 「そうだよ。だって、さっちゃん、藤岡弘さんみたいなのがタイプって、言ってたから」  言われてみて、確かに言ったことがあるのを思い出す。からかうつもりで、「私たくましい人好きだからなぁ。藤岡弘とか」とふざけて言ったのを、ぼんやりと思いだした。  血の気を波にさらわれる。それを受け取ったみたいに、隣で顔を真っ赤にして「もう一回行ってくる」と波へと挑んでいった。  それから、家から持ってきたから食べてと言われた、もう完璧に冷めているカレーを食べて、落ち着きを取り戻しながら、現実逃避をしていたのが、私なんですね。  だって、まさかそんな不思議現象の発端が私のふざけた発言って、なにそれ。  そうじゃないかもしれないけど、もうなんか、そうじゃん。  ああもう、神様って奴は本当に、余計なことをしてくれた。 「あーあー。これじゃあ、責任取るしかないじゃんよ」  結婚とか、一生する気なかったんだけどなぁ。  それに、私の好みは、高校の、いや小学校の頃で止まってるから、更新しないといけない。  そう時間は、かからないだろうけど。          了
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