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第一章 不思議な老紳士
松本真治三十三歳は仕事での疲れを癒すために、今日もバーで酒を飲んでいた。
「お疲れのようですね」
隣に座っていた初老の紳士が話しかけて来た。
「いやあ、ちょっとね」
真治は愛想がてらに返事をした。
「もしかして、上司のイジメで困っているとか?」
紳士は言った。
「どうして、それを」
真治は核心をつかれ、たじろいだ。
「もしよろしければ、あなたにいいものを紹介しましょう」
と言って、紳士は十枚のカードをスーツの内ポケットから取り出した。
「これはラッキーカードと言って、ピンチをチャンスに変える魔法のカードです。ピンチに直面した時にこのカードを手に取って、願い事を口に出して言うと、その願いをかなえるチャンスが巡ってきます」
「ふうーん」
真治はカードを手に取って見回した。表が金色、裏が黒色のカードだった。
「これを1億でお譲りしましょう」
「1億だって、そんな金あるわけない。あなたは私をからかっているのですか」
「簡単なことです。宝くじを買う時にこのカードを出せば1億円はあなたのもの。そのお金で支払っていただければ。その時にこのカードが本物かどうかわかるはずです」
真治は半信半疑でカードを受け取った。
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