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第三章 諸刃の剣
真治は久々に友人と酒を酌み交わした。
「お前凄いな、その年で社長かよ」
「ラッキーだっただけさ」
真治は最後に一枚残ったカードをさわりながらそう答えた。
「もしかしてラッキー反転カードじゃないか。俺も実物を見たことはないが、マヤ文明の時代にピンチをチャンスに変えるカードがあったらしい。ただ使い方がやっかいで、そのカードを使ってピンチをチャンスに変えると、その反動で今度は同等のピンチが訪れるらしい。著尻を合わせるには、最初に裏面の黒い方のブラックカードでチャンスをピンチに変えて使うらしい」
友人は言った。
真治は愕然とした。もし友人の話が本当なら社長になったのと同等のピンチが来る。しかも、そのピンチをこのカードで乗り越えても、最後のピンチの時に手札はない。
恐れていたことは直ぐに訪れた。自社の商品のリコールで社長退陣を迫られた。カードの力のみでここまで来た。ここでカードを使っても、次のピンチを自力で乗り越えられる自信はなかった。真治は諦めて辞職した。
その後、真治は職を転々とし、転落の一途をたどった。皮肉にもカードへの過度の依存が、真治からピンチに打ち勝つ力を身に付けるチャンスを奪っていたのである。
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