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これまで無条件に信じていたスキャニングの結果と乖離するダンジョンの様子を目の当たりにして激しい口論を続ける魔導士と指揮官、ライナはその激しいやり取りを他人事の様に聞きながら前方に存在する三叉路を見詰めた。
(……スキャニングの結果と相反する姿を見せるダンジョン、少なくともここから逃げ出して来た屑の言っていたこのダンジョンが普通のダンジョンでは無いと言う言葉は正しかった様だな、ならば、やはりリーナとアリーシャは逃げられなかった屑どもと共に……そして、私もこの屑どもと共に……)
ライナが目の前に広がる異質のダンジョンの光景を見ながら親友であったリーナとアリーシャが辿ったであろう末路と、これから自身が2人と同じ様な末路を辿るであろう事に思いを寄せていると前方から一団の人影が姿を現して此方に向けて近付き始め、ライナはそれに気付くと小さく息を吐いた。
(……どうやら迎えが来た様だな、リーナ、アリーシャ、私も直に貴女達の所へ逝くぞ)
ライナがそんな風に思いながら心を落ち着けている間にも進み続けていた一団の人影は、病的な程に青白い顔をした残党狩部隊先発隊の将兵達の姿となり、接近して来る一団に気付いた指揮官は口論を止めると彼等を睨み付けながら怒声を張り上げる。
「貴様等無事だったのかっ!!一体どう言うつもりだったのだ、何があったのかさっさと報告しろっ!!」
指揮官の怒声を受けた先発隊の将兵はそれに応じる様に歩みを止めたがその病的な程青白い顔からは表情と言う物の存在が認められず、その異様な様子から異状を感じ取った指揮官は後退りしながらライナに声をかける。
「ダ、ダークエルフっ!!さっさとあいつ等の所に行き、様子を調べて来いっ!!」
指揮官の言葉を受けたライナは無言で佇む先発隊の所に向けて歩き始め、一団の虚ろな青白い顔を確認して自分に最期の時が近付いているのを悟った。
(……リーナ、アリーシャ、もうすぐ貴女達の所へ逝ける、貴女達を護れなかった無力な私だが、向こうでも私を親友にしてくれるか?)
ライナは既にこの世にはいないであろうリーナとアリーシャに呼び掛けながら鉄球を引き摺り歩き続け、青白い顔で佇む先発隊の前に到着すると背筋を伸ばしながら口を開く。
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