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第5話
時折、お父さんの夢を見る。
夢の中のお父さんはとても素敵で、私にサッカーを教えてくれる。生きていた頃と一緒。優しくてかっこよくて、そんな朝、私はにやにや笑いながら目が覚める。
サッカーなんて、もう当分やってない。
だってお父さんとしかしてないもの。14年も私はサッカーボールを蹴っていない。
きっとこの先も一生、私はサッカーボールを蹴ることはないだろう。
「子供は嫌いだ」と言う冬樹さんは、もう3日も帰って来ない。
広い広いキングサイズのベッドの上。今日の私は、泣きながらお父さんにすがる夢を見て目が覚める。
今日は、双葉学園に行く日。
昼過ぎから6時まで。希望してくれる子に、フラワーアレンジメントを教えることになっている。
生花も教えるけど、希望者は生花よりフラワーアレンジメントの方が倍以上多い。やっぱり洋風の華やかなアレンジメントは、女の子の憧れみたい。
私としては生花の方が専門なんだけど、それは習う子の好みだから仕方ない。ベランダに置いてもらったガラス温室から、私は今日使う花材を選んでいく。
この温室は、私が唯一冬樹さんにわがままを言って買ってもらったもの。
広さは1帖ほど。高さは180センチくらいで、冬樹さんなら頭が当たってしまうぐらいの低い天井。
でも150センチしかない私は、手前に踏み台を置いて使っている。棚にはびっしりの鉢植えの花達。
季節に沿った花はベランダにそのまま出しているから、うちのベランダはさながら花畑と言っていいぐらいの華やかさ。今はマーガレットとデルフィニウム、ガーベラも綺麗。
そこから私はちょうど良く開いた花を選んで鋏を入れる。デルフィニウムがいいな。これをメインに持ってくると、きっと綺麗なアレンジになる。
あとはガーベラ。バラも少しだけ咲いている。あと2週間もすればきっともっと花開く。でも、今日は仕方ないわ。
それでも用意したバケツには、あふれんばかりの花と葉物達。あとは『フローリスト ムライ』で店長さんにお願いしよう。店長は私の施設でのお花の教室に、強く賛同してくれている。
お願いすれば、もう勢いのなくなったお花をただでわけてくれる。それ以外は私がバランスを考えて購入させてもらう。
やっぱり定番のかすみ草がいる。他にも旬の花達、3000円ぐらい購入したらいいかしら。
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