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自慢じゃないが、俺は運動が苦手だ。
動くことがあまり好きじゃない。
お陰でそんなに筋肉もついていなくて、背の割りには体重は軽いかもしれない。
そんな俺が千代のまわりの男に嫉妬して入ったのは、サッカー同好会。
当然、サッカーなんて興味もない。
千代はサッカーが好きで、俺にはわからない選手がいいとか、テレビはサッカーばかり見ているとか、サッカーリーグのマスコットやグッズを集めてるとか、自分もサッカーをしたがるとか、そんなやつで。
同好会に入ったはいいけど、サッカーしようと言われても乗り気になれず。
サッカー見に行こうと言われてもあんまりうれしくもなく。
そんな態度を見せていたら、またフラれた。
何回目の別れになるのかわからない。
趣味が合わないのだから、別の女とつきあえばいいと自分でも思う。
それでも、同じ大学のそれなりに可愛い子に告白されても、そっちにいけなかった。
どれだけ俺は千代に一途なんだと自分に呆れる。
大学3年で別れて。
4年の前期が始まるまでの長い春休み。
実家で暮らしていたけど、千代とつきあって、千代の家に寝泊まりばかりしていたら、一人暮らしでもしてこいと実家を追い出されて一人暮らし。
たぶんきっと彼女と同棲してこいということだったのだろうけど、同棲しようと、その家に上がり込もうとしていた千代とは別れて一人暮らし。
働かないと家賃は払えないし、バイトをしている。
少しでも給料のいいところを求めて、配膳派遣。
名のあるホテルのレストランでウェイターというバイトをしている。
いかにもなホテルの従業員姿で、クビにならないように丁寧に接客をして、社員によくしてもらっている。
激しく動き回るようなレストランでもなく、ゆったりと大人の雰囲気の高級レストラン。
裏側では、ばったばったと走り回ることもあるし、俺はしたことないけど、粗相をするとものすごく怒鳴り散らかされる。
俺はあがったオーダーをシェフから受け取って、席を確認して運ぶ。
皿は熱いし、素手でふれると火傷しそうなものをトーションという布を使って腕に乗せて運ぶ。
客の机に持っていくと、うれしそうな悲鳴をあげてくれて。
俺はもう慣れた料理の説明をしながら取り分けて、皿に盛り付ける。
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