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一方、教官の背後では、隆義たちが広島城からの猛攻に懸命の反撃を行っている。
教官が豪攻車を動かしたのも、城から飛んで来る機関銃の弾から子供たちを守る為だ。
「くそ! あいつら上から撃ってくる!」
[そりゃそうだろうな。奴ら建設中の足場に上がっているぞ!]
隆義は、内堀周辺に植えられた木々越しに、発砲炎と曳光弾を睨んでいる。
「地上も歩兵の数が増えてきた……」
呟いた直後、背後にいる轟震がまた巨砲をぶっぱなす!
ズドズドズドォォーン!! タイミングを遅らせた砲声が三回、晴天ならぬ月夜の霹靂が空へ打ち上げられる。
[こちらエニアック! みんな俺の事忘れてない?]
ノイズ交じりに響くあどけない声。エニアックこと松少年だ。
[メルテルシスよりエニアックへ。お前今どこだ? まさか突撃しちゃいないだろうな!]
[突撃なんかしてないって! 俺も今ヤバいって解るからさぁ!]
抗議の意思を込めて、松は声を荒げた。
[とにかく、今どこにいるか教えろ!]
[学校出てすぐ西の道路! ココたちから見えないだろうけど敵が来てる!]
どうやら松は、白島小学校と基町高等学校の間にある小道にいるようだ。
彼は今、北方向に向かってステンを撃っている。
[ドクターエイブルだ! エニアック、すぐ北にRPG(対戦車ロケット)持ちが居るぞ! そこだと逃げ場が──]
[解ってるよぉ!]
ワインレッドと黒に塗られた松のジャグリオンが、不意にジャンプする。
そして空中で左右に木の葉が舞い落ちるような動きを見せた直後──
件のロケット弾が、すぐ隣の基町高校の校舎、その最東端の角に!
ドォォン!! と大きな音が響き、外観の特徴であるガラスが衝撃で割れていく!
「たかよし!」
不意に、きゅーちゃんが声を上げる。
「きゅーちゃん?」
「にしのほう、さっきまどがわれたところのおく!」
きゅーちゃんが隆義の頭に、思念を送る!
その瞬間──隆義の目はきゅーちゃんの視界を借り、建物の内部を「透視」できた!
目の前でガラスが落下中の建物は基町高校南棟だが、その奥──西棟の下側。
[西より敵機! 基町高校の敷地の中!]
[任せて!]
心の声が無線に響き、基町高校のグラウンドに突入した敵機が爆ぜる!
[こんな近くじゃ外さないよっ!]
が。
[ココ! 何て事するんだっ!]
[ふぇ!?]
零治の怒声!
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