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菊花にも、きゅーちゃんの声が聞こえたのだろうか。
だが、今は戦闘に集中しなければ、自分たちも白島小の子供たちも危険だ。
[こちら整備班! 大変だ! 二番リフトのモーターが煙を吹いた! 現在人力クランクで対応中!]
[ラウンドより整備班へ! 火は出ていませんか!?]
[火が出る前にブレーカーを落としたが、念の為、一階に下ろしたら消火剤をかける! モーターが交換できりゃいいが、下も子供たちで一杯だ!]
隆義は無線を通じて状況を聞いているが、轟震の中は騒然としている。
リフトについた整備員は、インディア中隊の一人と共に、人力でクランクを回しながら下に下りようとしていた。
[了解! 一番の方は!?]
[何とかもってる! けど、許容ギリギリで運転してるから相当熱が溜まってるはずだ!]
[ドリルサージェント! 子供たちの残りは!?]
[五年二組と六年全員で四クラス分、百人と少しだ!]
そこまで聞いた零治は、息を大きく吸った。
そして、ゆっくりとそれを吐き出した後──
[──了解しました]
落ち着いて、ドリルサージェントに応える。
さらに、零治の行動は続いた。
[ラウンドよりノーブルデイジー、クリアウォーター、二人共聞こえますか?]
[聞こえてるわよ!]
[広島城からの攻撃に対応しています!]
[あと百名ほどで生徒たちの収容が終わります! 轟震の中へ戻ってください]
菊花と真澄に対し、帰還命令。
[て、敵はどうするん?]
[囲まれていますが──]
[メルテルシスより新兵二人へ! 気を使ったんだよ察しろ! 先に戻れ!]
[ジョニーマクレーンだ。ラウンドも考えがあって言ってる。後で会おう!]
[……わ、解ったわ。クリアウォーター、戻りましょ]
[はい。……皆さん、気をつけて!]
広島城に向けて射撃を続けていた水色と紫の豪攻車が、後ろに下がって行く。
[あぁぁ弾が無くなっちゃった]
[夕凪さ……ノーブルデイジー、後ろ!]
ごつんっ!
菊花の豪攻車が何かにぶつかった。
[ドリルサージェントよりノーブルデイジーへ。俺が乗って来た豪攻車にぶつかったぞ。大丈夫か?]
[あ、あぁ大丈夫。何ともない]
その瞬間、無人の豪攻車の手から弾切れの機関銃がぼとりと落ちた。
それを横目に、教官は轟震の中の子供たちに叫ぶ。
「ロボットを中に入れる! みんな端のスペースを空けてくれ」
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