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さらに、教官は後ろを振り向いた。
「お師さんも中へ。周りは敵に囲まれています」
「うむ……」
老僧はそう答えると、後ろに停めたサイドカー付きバイク──陸王に乗る。
子供たちが一旦止まり──
「お爺さんも早く! 撃たれちゃうよ」
「有難う」
菊花の豪攻車の後に続き、陸王に乗った老僧が轟震の中に入った。
[あ、銃が落ちていますよ]
さらに後ろから来た真澄の豪攻車は、先程落下した機関銃──元はシ式の装備であるホ一〇三改を拾い上げると、陸王の後に続いた。
豪攻車二機は、子供たちが端のスペースを空けたおかげで、ギリギリながら固定スペースに入る事ができたが、このまま全員が乗るとどうか。
教官はそう考えながらも、後続の子供たちの誘導を再開する。
[各機、後退準備!]
零治の号令が、全員に響く。
[割り込み失礼、こちら整備班です! 二階も満員になりました!]
[一階格納庫の残りスペースは?]
[こちらドリルサージェントだ。最後に残った六年生も収容した! だが、機体を収容する余裕はもう無いぞ!]
状況を聞いて零治は息を呑んだ。恐らくはこうなるだろうと予想はしていたが──
幸いは、菊花と真澄の機体を回収できた事か。
[各機、追加報告! 格納庫にはもう機体を収容する余裕がありません]
非情な現実である。
その最中にも、校舎の上に上がっていたココとセイマイネームが、轟震の腕により地面に下ろされる。
[ちょ、ちょいっ! それじゃどうするんよ!?]
[ノーブルデイジーとクリアウォーターへ。そんな事は決まっているだろう]
[え、えっと確か、ドリル……なんとかさん?]
[ドリルサージェント、意味は訓練教官だ。子供たちの為に少しスペースを空ける]
轟震のランプドアが、ゆっくりと閉まろうとする中──ジャグリオンが一機、隙間を縫うようにして出撃してきた。
[ラウンドよりドリルサージェント! 出撃許可は出していませんが──]
[エイコ、確かに約束は守った! ラウンド、四百五十六人も子供を乗せたんだ。急いでシリウスの所へ戻るのが得策だぞ。あと、この事態の原因は俺だ]
教官のジャグリオンは無人になった豪攻車の乗降ハッチの中に手を突っ込むと、操縦席を握り潰す。座席が掴み出され、ジョイスティックとペダルも、引っ掻き出すように破壊していく。
[この事態、あの時のアフガニスタン以来だな。]
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