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それは、痛みからくる憎しみの咆哮だった。
エメルダが、ゴーラの心臓を抱きしめた。
「苦しんでる。ゴーラが、燃えるような怒りと、憎悪を全身に漲らせて。ゴーラ、怒りを鎮めて」
エメルダは祈っている。
ゴーラが、大きく息を吸い込んだ。
マラガ火山から、エネルギーが吸収されていく。
マラガ火山の中腹で、ユノは、体内の気を高めていた。
「はあああああ、魔力吸収です」
ユノは、それ以上だった。ユノが吸収した力は、右手に収縮していく。
そして、マラガ火山から、火が消えた。
ゴーラの光のブレスがくる。
ユノは、渾身の力で右手を突き出した。
「魔力解放。とう」
ユノの一撃と、ゴーラのブレスが激突した。
力は完全に拮抗していた。
しかし、ゴーラは既に、魔王の兵器に侵されていた。
魔王の開発したウィルスは、力を増すごとに細胞を破壊していく。
ゴーラの、腕の肉が落ちた。
そして、ユノの気が、ゴーラのブレスを打ち破り、ゴーラを飲み込んだ。
力の奔流の後に、上半身を白骨化させたゴーラが、佇んでいた。
エメルダがゴーラの心臓を抱きしめた。
「怖いよね。痛いよね。解るよゴーラ」
エメルダの、祈るような言葉が続く。
「私の村はいいよ。温泉もあるし、食べ物も美味しいし、オババは優しい。大陸は変わりつつある。でも、そこまで悪くないよ。お陰で、大事な人に、仲間に出会えた。だから、ゴーラ、私の心を見て」
心臓が、優しい光を発した。それは、エメルダとゴーラが繋がったことを表していた。
「お前も帰りたいのね、ゴーラ。うん、帰ろう」
ゴーラがゆっくりと歩き出した。火の消えた火口に沈んでいく。
そして、大噴火を起こした。
伝承の通りに、火の神の使いが、最期に、火口に身を没して消えたのだった。
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