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「まあそうだね。ゴーラと環境破壊は、実際には関係ない。どっかの馬鹿野郎のうっかりが原因だ。準備は進んでる。切り札も、多分ある。オババ。あんたの知恵を貸して欲しい」
オババは頷いた。
「ゴーラの伝承は昔からあった。本来、それは大地の改良のために存在した」
土壌の改良か。神がやりそうなことだった。
神に関わったことのある、ジョナサンにだけ解る話だった。
仮に、それが暴走し、暴れ回り被害者が出ても、神にとっては些事に過ぎない。
「賢者サルバトールの話だと、鍵はゴーラの心臓だという。何のことか解るかい?」
「今のゴーラは心を持たぬ。破壊欲求のまま動き続ける心なきモンスターに過ぎん。エメルダ」
オババはエメルダを見つめた。エメルダはぽかんとしていた。
「ゴーラの心臓を使い、お前がゴーラを鎮めるのだ。これはお前にしか出来ぬ」
「私にーー出来るの?」
「火神マルグリウスがゴーラを遣わした時、選ばれたテイマーがいた」
なるほど。コントロールするテイマーがいたのか。
「お前にしか出来ぬ。我が子孫であるお前だけだ」
「解った。ーーやってみる」
エメルダはゆっくり頷いた。
まだやることは残っている。
エメルダを引き連れて、ジョナサンは村を歩いていた。
若者達は何故かジョナサンに心酔した様子で、ジョナサンの指示を待って避難の準備をしていた。
「先生、私に出来る?」
エメルダはポツリと呟いた。
「出来る出来ないじゃない。やるしかないなら気張るしかないだろう。お前さ、もうちょっと自信持てよ。ユノ相手に一歩も引かなかったじゃねえか。お前はいいテイマーだよ」
あ。いた。
遠くで、ご近所の家財を積み上げているアルスの姿があった。
「よう、アルス」
「ああ、エルネストさん。大変なことになっちゃいましたね。火薬の輸入なんてレベルの話じゃなくなっちゃいましたね」
「どっちにしろ採掘権がねえよ。なあ、ところで、あの像な。あの石はどこから?」
「ええ。裏山ですよ。あそこで産出されました」
「採掘権は村なんだな?」
「そうですよ。特に価値のない石ですから」
「そうか!そうなんだな!あれ沢山採れるのか?」
「そうですね。裏山一帯が産出地ですね」
「じゃあさ、ちょっと耳貸して。あのさ、チリ硝石って知ってる?」
アルスはぽかんとしていた。
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