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これで準備は整った。
やるべきことはやった。
人事を尽くして天命を待つ。
融通の聞かない火の神だけれど。
居並ぶ全ての人間が、固唾を飲んでその時を待っていた。
その日、この時、都が沈黙した。
変化が起きた。ゴーラの皮膚が。パリパリと剥がれ落ちた。
ゴーラが、細動を始め、やがて、再活動を始めた。
「ジジイ!生きてるか?!」
火食いダチョウに騎乗したジョナサンが、賢者に駆け寄った。
賢者は、肩を落として息を荒くしていた。
乗れ!そう叫んで、賢者を担いで走り出した。その場所を、ゴーラが踏み潰した。
「これ!もうちょっと優しくせんか!」
「喧しい!ゴーラは?!」
「目を爛々とさせてこっちに向かってきおる!お前じゃ!お前が呼び寄せておるのじゃ!」
「ああ!人の恨みを買うのは慣れてるよ!このまま火線まで引き込む!」
破壊に先導するように、火食いダチョウは突き進んでいく。
ジジイを背負って。
火線のラインを超えた瞬間、一斉に砲声が轟いた。
練度の高い警備隊砲兵。指示通り、魔法で強化された砲弾は、音速を超えてゴーラに着弾した。
しかし、ゴーラは止まらなかった。着弾した場所から出血しながらも、その足は止まらなかった。
「次弾装填しながら待避だ。プレッシャーをかけつつポイントに誘導する」
「ポイントとは?」
「決まってる。あいつの力の源、マラガ火山だ」
ジョナサンが指差す先に、噴煙を上げる、巨大な火山があった。
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