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子犬はあと1週間もすれば退院できるらしい。
どんどん元気になっていく子犬に素直な喜びを抱くものの、今日ひとつの心配事が浮かび上がってきた。
里親をどうするかだ。
「……どうしたの?」
帰り道、考え込んでしまった真奈美に正人が心配そうに問いかけてきた。
「う……ん、あの子、退院したらどうしようって……」
子犬が助かったことばかりが嬉しくてその他のことを何も考えていなかった。そんな自分の無責任さには情けなくて言葉も出ない。
「本当はうちで飼えたらいいんだけど……、ほんの一週間前にうさぎ飼ったばっかなの」
「そうなの?」
「うん……」
どこか当てはあるだろうか。友人や近所の友達を頭の中に思い浮かべるが、あいにくなかなか頼めそうなところはない。
「あのさ、あの子のことは心配しなくていいよ。俺、飼うから」
「え? ええっ」
しかし次の瞬間、真奈美は突然そんなことを口にした正人を驚きの表情で見つめた。実にあっさりと、彼はとんでもないことを言う。
「え、え、ほんとに? 高田くんが? で、でもお母さんとか……ご両親とかに聞かなくていいの?」
「うん」
別にいい、とこれまたあっさり正人は言った。
「うちの両親、俺のやることには反対しないから」
「は、はあ……」
やっぱりしっかりした息子を持つと、自然とその両親はそうなるものなんだろうか。真奈美は未だに何かやるたびにいろいろと両親に心配されるので、正人の言っていることはとてつもなくすごいことに聞こえた。
「……高田くんってすごいね」
「え、何が?」
本気で感嘆した真奈美に、正人は驚いたように問い返してきた。
「だってすごくしっかりしてるし、頭だってとってもいいし、こんなふうにいろいろしてくれるし……。優しいからわたし甘えちゃうよ」
真奈美は小さく俯いた。
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