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「高田くん、ありがとー。今までで最高のできだよ」
その翌日。
いつもなら机にうつ伏したまま絶望の淵に沈んでいるはずのその時間を、真奈美はにこにことしたようすで迎えていた。
学期に1度校内で行われる実力テスト。この2週間ほどの間、毎日のように正人に勉強を教えてもらっていたおかげだった。
「良かった。頑張ったもんね」
「うん、本当にありがと」
真奈美は笑顔で礼を言うと、正人は優しい笑顔のままうん、と頷いた。
「それでさ……」
そしてそのあと、彼は少し困ったような表情を作る。
「あの子のことなんだけど」
「あの子? ああ、わんちゃんね」
子犬のようすを思い出し、真奈美の表情は自然と柔らかくなる。
「うん。そのさ、あいつの名前どーしても決まんなくて。……よかったら一緒に考えてほしいなあと」
「え、いいの? 一緒に考えても」
思いがけない正人の言葉に真奈美は驚いた。
「うん、その方が嬉しい。俺、名前のセンスないからさ……」
何だか情けなそうに正人は言葉をこぼした。
真奈美はそれに少し笑ってしまい、その笑顔を残したままいいよ、と頷いた。
「どうすればいい? 名前、早くつけてあげたいよね。今日これから一緒に考える?」
そう尋ねると正人は思案顔になった。しばらくして顔を上げたかと思うと、いたって普通の顔をしたまま口を開く。
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