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くぅーん、と、か細い鳴き声が聞こえてきたのはそのときだった。
はっと顔を上げ、きょろきょろと辺りを見回す。けれど特に何も見あたらず、気のせいかと思い通り過ぎようとしたとき、再びその鳴き声は聞こえてきた。
すぐ右にある公園。その声だけを頼りに足を進める。ブランコの隣にあるドーム型の滑り台をなんとなく覗き込むと、そこにはまだ生まれて2ヶ月ほどであろう子犬の姿があった。
思いがけない見付けものに一瞬目を見張るものの、真奈美はすぐにはっと我に返り、すぐさま行動を起こした。
持っていた傘を首と肩ではさみ、空いた両手で子犬を抱き上げる。雨に濡れた子犬の身体はすっかり冷え切っていて、力無く真由美の腕におさまった。
「わんちゃん……?」
小さな声で呼びかけても、子犬はか細く鳴き声を上げるだけだ。
鞄からタオルを取り出し、それで子犬の身体を包み込む。どうしよう、と心が叫んだ。腕の中にいる子犬がひどく弱っていることは確実だった。
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