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「だいぶ弱っていましたが……もう大丈夫ですよ。命に別状はありません」
死の宣告を待ち受ける気分で子犬の診察を待っていた真奈美は、医師のその言葉にぐっとため込んでいた息を大きくはきだした。
はあ、と一気に気が抜けて、後ろにあった椅子に座り込む。眠っている子犬を見た。まだ元気はなさそうだけれど、濡れた身体もきれいにしてもらって、気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「……大丈夫?」
「うん……」
隣に腰掛け、顔を覗きこんできた正人に、真奈美は力無く頷いた。大丈夫だと医師に言われたものの、まだ心臓はどくどく波打っている。
「ありがと、高田くん」
「いや、俺は何もしてないけど……」
「ううん、本当に。わたしひとりじゃ何もできなかったと思うから……」
もしあのとき正人が声をかけてくれなかったら、本当にどうなっていたか分からない。病院、という文字さえ頭に浮かんでこなかったかもしれない。
「良かった……」
子犬がぴくぴく耳を動かしたのを見て、真奈美は改めて安堵の息をはき出した。
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